「アンメット-ある脳外科医の日記-」は、記憶障害をアイテムとして上手く活用することに成功した作品でした
                                      2024年4月~6月期

 ちょっとご都合が良すぎる記憶障害でしたが、ストーリー展開としての大きなスパイスとしては成立していたと思います

 この作品を観ていて以前は医療ドラマと謳えば医療そのものを中心に描かれた作品が主でしたが、最近は「医療」を一つのアイテムや切っ掛けとして使い、主軸は人間ドラマだったり、サスペンス、ミステリーに仕上げるように移り変わってきているように感じます

 ただ一つのアイテムだとしても、前日の記憶がない、その日の日記を読み返すことでしか記憶を保てないとしたら、さすがに医師業務、外科医としては成立しないとは思います…
 先ずはそこには目を瞑って…

 杉咲花さんが演じた川内ミヤビの記憶障害の原因と治療に隠された謎が徐々に明らかになっていきます
 その原因に善と悪の明らかな一線を画すことなく、治療に苦悩する医療者として真の「悪い人」は存在せず、ミヤビの記憶障害を中心に登場人物の愛と信頼と誠実さ、真摯さが露わになっていく様は圧巻のストーリー展開でした

 現実の世界で、医療を扱う中で、医療に於いて、医療者に真の「悪」は存在しないと思っている、信じている医療従事者として、このドラマは医療ドラマとして確信的、革新的なドラマだったと感じています
 他の医療ドラマでいつも悪徳院長や理事長、外科部長などが出てきて、患者そっちのけでお金と権力に奔走する医療ドラマばかりで辟易としていたので、そう言う意味では痛快なドラマでした

 そして特に最終話では極力セリフを少なくし、背景や音楽もできる限り省いた演出によってドラマの核心を作品が発声しなくても、観手としては投げつけられて理解してしまう説得力がありました

 杉咲花さんのミヤビの喜怒哀楽を的確に真摯に観手に伝えてくれる演技力がミヤビの世界に観手を引き入れてくれました

 三瓶友治を演じた若葉竜也さんは不思議な感覚を持った俳優さん、役者さんといった方が的確なのかもしれません
 連ドラで初めて拝見しましたが、前半はまだ少し演技に堅さが、緊張が伝わってきたように感じましたが、11話が進むにつれて独特の感性を持った巧い、上手い俳優さんの片鱗が見えてきたように思います

 そしてこのドラマの良い感じのアクセントになっていたのが星前宏太を演じた千葉雄大さんです
 ドラマの主軸が前後左右と動いていく中で、絶妙に反対方向に動いたり、立ちはだかったりと絶妙にドラマのバランスを保つバランサー役が秀逸でした

 そして少しシリアスになりすぎるテーマのドラマにあって、成増貴子を演じた野呂佳代さんと森陽南子を演じた山谷花純さんはほっこり出来る、ホッとするドラマのオアシスの役目をしっかりと果たしていました

 さらに藤堂利幸を演じた安井順平さんはこのドラマのカッコいいの一人勝ちかもしれません!

 最終話の演出、演技、脚本に真のプロフェッショナルを感じた秀逸な作品でした

「観手」:ドラマを創る・作成する人の「創り手」という言葉に対して、それを観る・鑑賞する人を差す言葉として使っています

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むろ さん
プロフィール

「ダンス」と「s**t kingz」と「iri」と「連ドラ」好きの「言葉の力」を信じる踊る博士(Dancing Phd.)のブログ集です

主に「連ドラ鑑賞文」を1クール(3ヶ月)毎に書いていきます
その他にも長文でTwitterに書ききれないことも書いていきます