「新宿野戦病院」は、もしかしたら医療の芯の芯を喰おうとしているドラマを狙ったのでしょうか…?
2024年7月~9月期
宮藤官九郎さんの連ドラとしては珍しく、3話くらいまでエンジンが掛からなかったのでどうなるんだろうと心配になっていました
しかし病院という医療の世界、新宿という場所、様々な立場の人たち、そして特殊なバックグラウンドを持つ主人公とたくさんの材料が並べられていて、それがある一つの芯のテーマを元に完成された一品料理になっていきました
そこからはちゃんと面白くなっていったと思います
その芯は小池栄子さんが演じたヨウコ・ニシ・フリーマンが時折口にする「医療の前で全ての人に平等である」ということです
お年寄りと若者、男性と女性とその他に属する人、CEOと社長と国会議員と無職とホームレス、お金持ちと貧乏、加害者と被害者と容疑者、善人と悪人などで治療を受ける優先順位は決まらない、優先順位は疾患で決まる、決めるものであるということです
報酬という現実を上回る究極の善意で推し進んで行くはずの医療の世界が、現代は揺れ動いているのが実情なのかもしれません
「医は仁術」じゃなくて「医は算術」と揶揄されますが、それはもう使い古された言葉で揶揄されていた頃が懐かしいという時代になっていると思います
このドラマが「医は算術」が揶揄でなく「AI」や「後発薬品の台頭」などが国を挙げて推し進められることで揶揄から現実の世界で当たり前に「仁術」から遠ざかっていく医療の世界を風刺しているとして観ていれば自ずと面白くなってきました
さすがに医療の渦中にいないとその芯の芯は喰えないだろうとは思いますが…それでも「医は仁術」を改めてテーマに押し出す医療ドラマは一件の価値があるかと思います
小池栄子さんのこのドラマへの嵌まり感、仲野太賀さんの楽しそうに自由な充実ぶり、塚地武雅さんの多彩な演技に基づいた器用さは流石のプロの集まりでした
宮藤官九郎さんの底力を見ました
ちなみに主人公のヨウコの活字体風英語は当初批判もあったようですが全然有りだと思います
ただ字幕が出る度にドラマの流れが止まる感じなのでそれも2話か3話までにして欲しかったです
「観手」:ドラマを創る・作成する人の「創り手」という言葉に対して、それを観る・鑑賞する人を差す言葉として使っています
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